◆蛇足の後日談〜彼らのその後〜◆
 

 ―――およそ2週間後。
 ルキスラの南、城砦都市ディザにほど近い農村に、一組の集団が引っ越してくる事になる。
 
 曰く、貴族出身の女性と駆け落ちした男性のカップル。プラス従者二人。
 そして、彼らの駆け落ちの際に協力者として雇われたという、元冒険者の少年と少女であった。
 事情を聞いた村人たちは彼らを温かく迎え入れ、慣れない生活での苦労もありながらも、彼らは村の一員として受け入れられていく事となったのだった――――。
 

◇サンドリーヌ◇
 
 蛮族である事を隠し、『駆け落ちしてきた元貴族』を演じて人族に混ざって暮らしていく事となる。
 村においては、慣れない生活に戸惑いながらも、霧の街の怠惰な日々よりも充実した生活を送って行く事となった。
 豊富な知識を持つ魔術師でもあるが故に、ミリィと協力して私塾を開き、いざという時に頼れる博識マダムという立場を村内で不動の物としたのは別の話。
 種族の差ゆえか、クリスとの間に子は成せなかったものの、生涯彼を愛し続けた。
 

◇クリス◇
 
 サンドリーヌの夫として、農村にて土地に根付いた生活を送って行く事となる。
 特に特殊な技能を持つ人間ではなかったが、真っ直ぐな性格と優しい人柄から、実は誰よりも早く村に馴染んでいた。
 畑を開墾し、普通の農民として暮らす傍らで、良くミリィのキルヒア神殿にて妹の冥福を祈っている姿が目撃された。
 

◇セバスチャン◇
 
 霧の街脱出後十年ばかりは、サンドリーヌの世話役として働き続けた。
 その後はメネにサンドリーヌの世話役を譲り、隠居した。
 好々爺として周囲の住人からは親しまれるが、その数年後に惜しまれつつも主君に看取られ没した。
 

◇メネ◇
 
 サンドリーヌの従者として仕えるも、その数年後に村の若者と大恋愛の末に結婚する。
 結婚後もサンドリーヌに仕えながらも、二児の母となり、家事に育児に忙しい日々を送る。
 その後、セバスチャンから正式にサンドリーヌの世話役を譲られ、生涯彼女の従者であり続けた。
 

◇ミリアム・レイク(ミリアム・ハザード)◇

 村に居ついてすぐに、キルヒア神殿を(主にウィルをこき使い)建立。
 同時にサンドリーヌと協力して、村の子供に学問を教える私塾を開いた。
 その後ほどなく、ウィルと結婚。一男二女の母となる。
 村唯一の司祭として村人に頼られ、村に蛮族や危険な動物などが出た折には率先して戦った。
 なにげにそれなりに高位の司祭なので、近隣の村からも彼女を頼る人が絶えなかったとか。
 メネとは生涯の親友であり、サンドリーヌ家郎党とも、家族ぐるみの付き合いを続けていた。
 

◇ウィリアム・ハザード◇
 
 ミリィにこき使われ、かかあ天下の見本のような結婚生活を送る。
 村では普段は狩人をして生計を立てていたが、あまり腕は良くなかった。
 が、村に何らかの危険が発生したときには、優秀な戦士として誰よりも勇敢に戦った。
 一応は騎士レベルの戦士であるため、住んでいる村のみならず近隣の村からも頼りにされ、自警団のような事を続ける事となる。
 ミリィとは時々喧嘩しながらも、仲睦まじい夫婦として近隣でも評判だったとか。
 

 

 

 

 ―――かくして、彼らの冒険は終わりです。
 長らく続いた霧の街探索。生存と脱出を第一に、せせこましく立ち回ったウィルとミリィ。
 脱出に成功した彼らは、冒険者をするでもダーレスブルクに仕官するでもなく、農村で家庭を築き、暮らしていく事を選択しました。
 
 以上をもちまして、此度の霧の街の冒険譚を終幕とさせて頂きたいと思います。
 語り部は零時でした。皆様、最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。
 
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